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Infection and Immunity |
研究紹介 教室における取り組みの紹介 教育・診療・研究における教室の取り組みは大きくは以下の3点である。現在すでに取り組んでいる課題もあるが、今後発展させたいと思っている課題もある。本項は、本教室に興味を抱いて下さる若手医師、医学生、研究者に参考になればと強く願っている。 臨床寄生虫病学の実践と継承および“寄生虫症もわかる医師”の育成 わが国では、寄生虫学の基礎的知識と臨床診断および治療に精通する人材は極めて少ないのが現状である。一方、世界には寄生虫疾患がなお蔓延していることは言うまでもなく、わが国においても土壌媒介性疾患こそ確かに激減したが食物媒介性の幼虫移行症や輸入感染症、さらに都会では男性同性愛者を中心に赤痢アメーバ症が増え、かつての戦後日本とは全く異なる多様な寄生虫相を呈している。にもかかわらず、「日本に寄生虫症はない」との誤認識が社会にはあり、また「寄生虫病は検便してコンバントリン駆虫」とのかつてのステレオタイプ診療意識が、医家の中にさえなお潜んでいる。これを正す手段としては、まず医学生に対する医学教育からスタートすべきと考えている。 次に、寄生虫症もわかる臨床医の育成のためには、医学生に対する教育の場(教室)以外に「見せて伝える」実践の場も必要である。平成20年7月より奈良県立医科大学附属病院・感染制御内科に寄生虫外来を設置していただき、県内あるいは近隣諸県の他病院や医院からの相談事案により適切に対処できるようになった。現在までの数年を振り返ると、日本海裂頭条虫症は例年多く、他に、マラリア、リ−シュマニア、胃アニサキス症、大腸アニサキス症、トキソカラ症、大腸赤痢アメーバ症、肺吸虫症、日本住血吸虫症(陳旧例)、フィラリア症(陳旧例、)蟯虫症、寄生虫妄想など多彩な寄生虫症患者の診療にあたった。このうち、マラリアをはじめ、内臓への移行が判明した数例のトキソカラ症や駆虫を目的とする日本海裂頭条虫症などでは入院治療例もあり、研修中の医師の教育に役立ち、また実践の場としも機能してきている。 臨床寄生虫病学の実践と継承を使命と考える故、幸事を敢えて好んで記載した。しかし、実地臨床の場では感染症における寄生虫症の位置づけは決して大きいものではない。総合的に感染症全般を学び、その中で“寄生虫症もわかる医師”を育成したいのが本意である。この目的のため本学感染症センターや他施設(大学・病院・研究所)との連携交流が密でありたいと考えている。 ES細胞等幹細胞の分化誘導および移植応用に関する研究等 旧寄生虫学教室へ異動して以来、臨床寄生虫学の実践とともに力を注いできたのがES細胞関連研究である。基礎研究としてこの分野に踏み込んだのは、石坂重昭前教授の発意にその源があるが、その研究の実際は、私とともに取り組んでくれた助教や多くの大学院生たちである。ES細胞の分化誘導研究に着手し、肝細胞(Stem Cells 20:146-154,
2002, FASEB J 2002)、インスリン分泌細胞(Stem Cells 20:284-292,
2002)、腸管様構造体(Stem Cells 20:41-49, 2002)、ドーパミン産生細胞(Stem Cells 2003)、網膜視細胞(BBRC 2005) などへのin vitro分化誘導、また、ES細胞移植の動物実験においては、肝線維化の改善(Int J Exp Pathol 2008)、パーキンソンモデル動物の行動改善(Neurol
Res 2009)、骨髄間葉幹細胞との共移植による腫瘍形成抑制(Cell Transplant 2009)
などの知見を得ている。さらに、最近、報告の極めて乏しいES細胞から内耳有毛細胞への効率的分化誘導にも成功し(Cell Death and Diseases, 2012)、今後さらに発展させたいと考えている。ES細胞のみならず、皮膚幹細胞も研究対象とし発毛の再生医学にも取り組んでいる。(Cell
Transplant 2012, J Biosci Bioeng 2010, BBRC 2008, 2007, BBRC 342:28-35,
342:1063-1069, 345:581-587 2006)。これらの研究の多くは、学内外の諸教室との共同研究の成果であり、今後も継続して取り組んでいきたいと考えている。このように、現在は幹細胞関連研究が教室の主たる基礎研究課題となっている。大学院にて、これらの分野の研究に取り組みたい方はご連絡をいただきたい。一方、new comers with new subjectsも大歓迎で、新しい仲間とともに全く異なる新分野の開拓も行っていきたい。 |
*新着情報 2020.10.19 日本寄生虫学会・臨床寄生虫学会 合同大会のHPを リンクしました |
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